-2.キセルゴケ目
(キセルゴケ目、キセルゴケ科、3属、12種)

「イクビゴケの仲間の概略」
 朔の形がたいへん変わっている面白い仲間です。イクビというのはさくの形が「猪の首」のように見えるからです。朔を付けているものに出会うと、一目で、この仲間とわかります。この仲間の朔歯は、他の蘚類の朔歯とはことなり、1本づつが離れた「歯」のようにはなっていません。朔口に白い「屏風」をまきつけたようについています。
 日本に3属、12種が知られています。
   キセルゴケ属Buxbaumia(2種)
   イクビゴケ属Diphyscium(8種)
   クマノゴケ属Theriotia(2種)

「イクビゴケの仲間の特徴」(体のつくり)
 イクビゴケやクマノゴケは、茎が短くて、その茎から四方八方に広がるようにして細長い葉がでます。その真中に猪の首を据えたように、朔がついています。朔柄もほとんど伸びません。このため、朔があると「麦粒をばら撒いたように」見えます。
 キセルゴケの仲間は、茎や葉はほとんど見えないほど小さく、胞子体だけが煙管やパイプを立てたように基物からつきでています。

「観察・同定のポイント」
 イクビゴケとクマノゴケの仲間は、植物体の先端中央についている雌包葉が長い棒状の突起を持っているのが肉眼でも見えます。この点で蘚類の他の仲間から容易に区別できます。
 クマノゴケは、イクビゴケの仲間によく似ていますが、クマノゴケは、必ず水しぶきがかかる岩上に生育してますので、野外では、容易に区別できます。
 イクビゴケ属には8種が知られていますが、葉の先端のとがり方、葉身細胞の乳頭の有無、雌包葉葉身部の先端に毛状の突起がでるかどうかなどで区別されています。
 キセルゴケの仲間は、野外では、小さなキノコが生えているように見えるかもしれません。でも、キノコのように白っぽくなく、若ければ緑色、成熟すると茶色になります。傘のように見える部分の下側には、キノコに見られるようなひだもありません。

「身近な、分かり易い種」
 @イクビゴケDiphyscium fulvifolium低地の道端の土手など土上に普通。
 @ミヤマイクビゴケDiphyscium foliosum:山地土上に普通
   葉の先端の形が特徴的でイクビゴケから区別されるが、時に区別がよくわからないこともある。その場合は、気孔がさくの基部にあるかどうかを確認する。もし、基部になくて、さくの上部(口の周囲)に気孔がある場合は、イクビゴケである。

 @リュウキュウイクビゴケDiphyscium involutum:西南沿岸部湿岩上(葉身細胞に乳頭なし)
 @ウチワチョウジゴケBuxbaumia aphylla:高山土上、まれに低地でも出現。
 @クマノゴケTheriotia lorifolia:水辺岩上